「着物」と「呉服」の違いって?

「着物」「呉服」…和装に親しんだ日本人ならどちらも聞き慣れた言葉かと思います。

しかしこの2つの言葉の違いをご存知でしょうか?

今回は知っていそうで知らない「着物」と「呉服」の違いについてご紹介していきたいと思います。

 

着物と呉服は語源が違う

現代の日本では、「着物」と「呉服」は非常によく似た意味合いで用いられています。

実際にこの2つの言葉を聞いた時、思い浮かべるものは同じではないでしょうか?

しかしこの2つの言葉、実はその語源に違いがあるのです。

ではどのように違うのか確認していきましょう。

 

■着物の語源

着物はその字の通り「着る物」として、広く衣服全般を示す言葉として元来用いられてきました。

しかし明治時代になると、日本に西洋の文化が流入して「洋服」が着られるようになり、「洋服」の対義語として「和服」という言葉が用いられるようになりました。

最初は洋服を着る人よりも和服を着る人が大半を占めていたものの、だんだんと洋服の着用が一般的となるにつれて「着物」という言葉の意味が徐々に変化していき、「和服」と同じような意味で使われるようになってきたのです。

現在では、世界的にも日本を象徴する文化の1つとして「kimono」という言葉で認識されています。

 

■呉服の語源

「呉服」も現代では「着物」全体を表す言葉として用いられています。

しかしその言葉のルーツは、中国にあるというのが「着物」の語源との大きな違いです。

呉服の「呉」は、中国の春秋時代に存在した「呉」という君国名がルーツであるとされています。

古代中国にて大国の1つであった「呉」の国から日本に着物の反物を織る「機織(はたおり)」という技術が伝わり、着物ではなくその技術でつくられた反物を「呉服(くれはとり)」と呼ばれるようになりました。

次第に反物の総称であった「呉服(くれはとり)」は中国からの織物全体を表す言葉へと変化していき、最終的には絹織物全体を総称する言葉として用いられるようになりました。

この「くれはとり(呉服)」が時代の変化とともに「ごふく(呉服)」という読み方で読まれるようになったということです。

 

着物と呉服は本来表すものが異なる

https://www.benricho.org/Unchiku/edo-syokunin/04syokuninzukushiekotoba/21.html

「着物」にも「呉服」にも言えることは、どちらも長い歴史と文化を背負うものであるということです。

しかしその語源は異なり、語源のルーツがわかると「着物」は衣服の総称、「呉服」は反物や絹織物の総称であることがわかります。

ただ現代では着物を売っているお店を「呉服屋さん」と呼ぶように、厳密な使い分けは行われていません。

そのため、2つの言葉の長い歴史を心に留めながらも、普段の生活では言葉の使い分けを気にしすぎる必要はなさそうです。