知っておきたい日本の伝統色~赤系~

お面を持った着物の女性

古来より日本では、「色」はただ美しいというだけでなく、身分や役割など、一つひとつに意味がありました。
現代ではあまり聞きなれない名称は、中国伝来のものや素材からきているものなどさまざまですが、赤系には「桜色」「紅梅色」などぱっと思いつく色も多く、馴染みのある色系です。
今回は、日本の伝統色の赤系についてご紹介します。

 

紅梅色(こうばいいろ)


紅梅の花の色に似ていて、かすかに紫味を含む薄い紅色のこと。
古くは11月から2月までの色として愛され、平安文学にもしばしば用いられています。
染めの濃さによって「濃紅梅」「中紅梅」「淡紅梅」の3段階に分けられますが、単に「紅梅色」といった場合は「中紅梅」を指します。
英名は「ローズピンク」。

 

朱鷺色(ときいろ)


天然記念物にもなっている鳥「朱鷺」の、羽の内側の色を表した色彩で、紫味の薄い赤色です。
同様の色は古代から染められていましたが、「朱鷺色」という名前で使われ始めたのは江戸時代からと考えられています。
英名は「キューピットピンク」。

 

韓紅花(からくれない)


別名「深紅(こきくれない)」とも呼ばれる、紅花で濃く染められた鮮やかな赤色です。
平安時代にはその染料があまり高価なために、禁色になったほど。そのぶん貴族たちに深く愛される色となりました。
英名は「ローズレッド」。

 

蘇芳(すおう)


マメ科の植物「スオウ」を原料とした色で、深い赤紫色。
スオウの木は海外からの輸入品で、正倉院に収められている書物にも記されています。
平安時代には紫に次いで高位の色とされました。
英名は「ラスベリーレッド」。

 

桜色(さくらいろ)


桜の花の色に似た、薄いピンク色をいいます。
古来より桜の花は人々に好まれ、かさねの色目(平安装束の色の合わせ方)には桜にちなんだ色名が多くつけられていましたが、色そのものに「桜色」という名称がつけられたのは江戸時代ごろと言われています。
英名は「ベリーペールオーキッドピンク」。

 

まとめ

美しい響きの多い日本の伝統色。着物の色を選ぶときも、ただ「赤色」「ピンク色」ではなく「朱鷺色」「桜色」と表せると、より深く着物の世界に入り込めそうです。