着物に入れる「紋」が表す格とは?“入れ方”や“数”の基本ルールを学ぼう
冠婚葬祭などのフォーマルなシーンで着られる着物には「紋」が入っていることがあります。多くの場合、家紋を入れますが、その入れ方や数によって着物の格が変わってきます。TPOに合わせた装いができるよう、紋についての正しい知識を持っておきましょう。
紋の入れ方
着物に入れる紋には大きく分けて、フォーマルな場面にふさわしい「染め紋」と、ややカジュアル寄りの「縫い紋」があります。
■ 「染め紋」の種類
(1)日向紋
紋の型全体を白く染め抜き、黒や着物の地色で模様をつけたものです。「陽紋」とも呼ばれており、白い部分が多いく、紋がはっきりとしているのが特徴です。染め紋の中でも“染め抜き紋”という、最も格が高い入れ方で、黒留袖・色留袖や喪服など、冠婚葬祭の正礼装にはこの紋を入れるのが一般的です。
(2)中陰紋
紋の型を太い線で白く染め抜いたもので、日向紋と陰紋の間の略礼装の紋です。着物そのものの格などに合わせて、日向紋では大げさすぎる場合や生地の色との兼ね合いで使われます。
(3)陰紋
紋の型を白く染め抜き、輪郭だけを線で表現したものです。格は略式の紋で、濃い色無地や羽織に使われることが多いです。
(4)石持紋
紋を入れる部分を、あらかじめ白く染め抜き、後から紋を描き入れる技法で「描き紋」とも呼ばれています。
■「縫い紋」の種類
糸を使って、刺繍で入れる紋のことです。糸の色は好みや着物の地色に合わせて選ぶことができ、金糸や白糸を使うと慶事向けになります。染め紋と同様に、日向紋・中陰紋・陰紋がありますが、縫い紋自体が略式の扱いのため、格の違いはそれほどありません。「まつり縫い」「すが縫い」「さがら縫い」「けし縫い」など、刺繍の技法によって紋の雰囲気が変わるので、お洒落感覚で楽しむ人も増えています。
■紋の数
※ 着物に入れる紋は、場所が決まっています。
・背紋…背に1つ、衿付から5.5㎝下の背縫いの中心に入れます。
・抱き紋…左右の胸に1つずつ、片山から15㎝下の前身頃の中心に入れます。
・袖紋…両袖の後ろ側に1つずつ、袖山から7.5㎝下の袖巾の中心に入れます。
※着物に入れる紋の数で、呼び方や格が変わります。
・五つ紋…背紋、抱紋、袖紋のすべてに紋が入り、最も格が高くなります。
・三つ紋…背紋、袖紋の2カ所に3つの紋が入ります。
・一つ紋…背紋の1カ所に1つの紋が入ります。
紋の数が多いほど格が高いとされるため、五つ紋は正礼装、三つ紋は準礼装、一つ紋は略礼装とされます。但し、着物の種類と紋の数の組み合わせによっては、格の扱いが変わることもあるので、気を付けましょう。
一見、飾りのようでもある「紋」には、様々な決まり事があります。場所や立場に合った装いは、周りの人への礼儀を表すものでもあるので、しっかりと正しい知識を身に付けておきたいですね。